メイキング

10(ヒトマル)式装甲機動歩兵の制作:メイキング

10(ヒトマル)式装甲機動歩兵の制作:メイキング

・パワードスーツを作つくってみたい

*この記事は、2010年の記録です。

ミキシングビルドの模型の楽しみ方の一ジャンルとして、横山宏先生のマシーネンクリーガーという世界観で創るというのがある。

その主役メカは卵型のパワードスーツ、SAFS。

僕はマシーネンクリーガーの大ファンなんだけど、せっかく創るなら自分の世界観で創りたいなあと、あえてマシーネンでは無いものを目指しました。

 それにしても、『パワードスーツ(強化服)』ってのは、たしかにゾクゾクする響きがあるね。

パワードスーツ・・・人が着込む、装甲服。
ハイテクな『鎧』で、個人用の戦車のようになっているもの。
なんといってもハインラインの小説「宇宙の戦士」(スタジオぬえの挿絵は最高!)、高速エスパーの強化服、宇宙刑事ギャバンとかシャリバン、シャイダーのコンバットスーツ、秘密戦隊ゴレンジャーのゴレンジャースーツ、エイリアン2のパワーローダー・・・最近の映画ではアイアンマンなんかも、この仲間だろう。

あのガンダムも、最初はこの『宇宙の戦士』を参考にした企画だったが、結局は、ただのロボットになってしまったのはちょっと残念。
名前だけは「モビルスーツ」と、その名残があるが。
まあ、そのおかげで18メートルの巨大なオブジェが作れるのだけれど。

着るだけでスーパーマンになれるので、僕のような運動オンチには憧れのメカだ。

最近は介護の世界では、似たようなコンセプトのものが実現しているね。
空気圧で動く人工筋肉みたいなのとか。寝たきりの人を、女性が持ち上げることが出来るとか。

で、僕も自分の世界観で、所謂「パワードスーツ」を創ってみたい気持ちがあったが、他のメカと違い、なかなか敷居が高かった。

飛行メカ等と違い、デザインの『縛り』が強い気がしてネ。

・挑戦してみた

で、僕も挑戦してみた。

一週間で完成しました。

ものすごく楽しかったので、その一週間、どんなカンジで創ったのか?お伝えしたいと思います。

道具と材料さえあれば、意外と簡単だと思います。

まあ、ミキシングビルドの場合、日頃からガラクタを保存しておいたり、スーパーマーケットの食品売り場でお菓子の梱包ケースをチェックしたり、100円ショプをのぞいたり・・・・そういう毎日から、「創作」は始まっているのですが・・・。

そう考えちゃうと、誰でも一週間で創れるわけではないかもね。

さて、それでは、制作ライブのはじまり、はじまり~!

 

 

・ 一日目

 2010年、7月28、29日の二日間、静岡県浜北の大型ショッピングモール『プレ葉ウォーク』で、僕のミキシングビルドの作品の展示と、模型教室が開催されました。

  浜北での模型教室の帰りに寄った「浜松鑑定団」という中古模型屋で、投げ売り格安コーナーで「光武・改 織姫機(サクラ大戦2)」というキットが500円で売っていた。定価は1200円。

 サクラ大戦というゲーム?はやったことがないし、アニメも見たことは無いが、そのカタチが、オリジナルのパワードスーツの『芯』になりそうに思えたので、購入。

 ちょっといじりはじめました。

 胴体はバイクのタンクの部品。


 うーん、やっぱりマシーネンに似ちゃうな。
腕をもっと長くして、足を短くしようと思ったけど、そうすると今度はスパンダウに似ちゃうし。

 マシーネン系のパワードスーツは1/20スケールが基本で、搭乗者は自分の手足を機械の手足の中に入れる形。
 僕はオリジナルメカは、基本を1/48で作っているので、今回も1/48。
だから搭乗者は上半身に乗る感じ。ボトムズのスコープドックみたいなイメージかな。
さて、どんなカンジにしようかな?


・ 二日目。

超音波カッターでキーンキーンと切り刻んで、プラ板を貼って、荒い紙ヤスリでゴリゴリ削って・・・・今夜はこんな感じになりました。だって、あのままじゃあ、ちょっと横山的でもあったし、ドルバック的でもあったし。
でも、うーん・・・ちょっと「ぬえ」に引っ張られているかなあ?
なんとかもっと「俺的」にしたいなあ。

股関節の「隠し」をどうしようかなあ。

それと「顔」。カメラっぽくしたいのだけれど。

ザクのモノアイって言うよりも、ボトムズ「スコープドック」のカメラみたいな。

いいパーツが見つからなかった。

ジャンクパーツの箱は、押し入れ用の衣装ケースに、あと何箱もあるから、明日は他の箱も探してみよう。


1/48という大きさがよく解らないかたも、いらっしゃると思います。
えーと、今現在、本体の全高は、10センチ5ミリ。小さいね。
 

寝る前にもうちょっとだけ。

顔をつけました。

顔の透明パーツの中にはカメラっぽいディテールを入れるつもり。

他にもチマチマ細かいパーツを付けて、いつもの「たなか流」に。

あと武器。なにか銃を持たせようか?


・ 三日目

頭に艦船模型用の金属のレーダーをつけてみました。
がんばれロボコンかよ!初期の静岡モデラーズフリマには、大昔の艦船模型用のパーツを売る業者が来ていて、オリジナルモデルを作るにはもってこいの、こういうパーツを売ってくれたのだ。
これで100円くらいだったかな?
細かいけど金属だから丈夫。
沢山買ったけど、いろいろ使っちゃって、もう無いや。
また来てくれないかなあ。来ないだろうなあ。
どこかに、こういうパーツを売っている店ってあるんだろうか?
情報求む!

そういえば、一昨年、ニョウボの漫画の取材で、山梨に向かう途中に、鉄道模型の専門店があって、立ち寄ってみたら、「使えそう」な部品が沢山あって、楽しかったな。

さて。
ロボコンにも似てるけど、ダグラム系にも見えるな。
今はピンクで派手だけど、渋い軍隊色で塗装したら落ち着くでしょう。
脇腹と股のあたりを考えないとね。
あと、手足が、もとのプラモの形が残りすぎてるから、変えないと。

・ 四日目

肩の防護板は、1/35軍用トラックのフェンダーを加工。
加工って言ったって、マジックで「こんなもんかな?」って線を書いたら、超音波カッターでキーンとカット。
切り口を、250番の紙ヤスリでゴリゴリ削れば、ハイ、出来上がり。
道具って、本当に凄いね。
超音波カッターは、歯科医をしている義弟のところから僕のところに嫁入りしてきたもの。
道具が良いと、自分の腕が良くなったと勘違いしてしまうね。

で、武器を持たせてみました。
自動車の模型のドライブシャフトの部品を小改造。レトロな光線銃。

そういえば、ガンダムで思い出したんだけど、本放送当時、高校2年生だった僕らは、放課後の美術室でガンダムについて熱く話していた(笑)。
当時、話していて、よく言っていたのは「リアルだよなー」という感想。
そして「これで肝心のガンダムのデザインが、もうちょっとリアルだったらねえ(残念)」という言葉。
今になってみれば、「ああ、このオモチャ的な部分が、適度に残るデザインだから、親しみもあって、良かったんだな」と思える大人になったが、やはり、当時は「残念なデザイン」であった。

おそらく今は、ほとんどの人が(ファンを自称する人でさえ)「ガンダムのメカデザインは大河原邦夫」と思っているが、当時からの濃いファンなら、それは、ちょっと違うってことを知っている(笑)。
(バンダイさんは、商売的なことからか、そのことを『黒歴史』にしたいようだが・・・)

富野さんは、「絵心」のある人だから、その構想ノート「富野メモ」には、ほとんど画面に登場したものと変わらないメカのラフデザインが描かれていたことは、その頃、「子供じゃなかったファン」なら、みんな知っていることだ。
まあ、そのあたりのことは、僕がギャアギャア言わなくても、ちょっとネット検索すれば、若いファンも勉強出来るだろう。

で、やはり、あの頃の僕らは、「ガンダムがもし、ハインラインの宇宙の戦士の小説の挿絵(スタジオぬえ)みたいなのだったら、よかったのになあ。」って思っていた。
ガンキャノンは、その影響をちょっと受けているデザインだけど、やっぱりちょっと玩具っぽい。そりゃあしかたがないよね、玩具のためのデザインなんだから。
その玩具っぽいデザインを、バンダイは、一生懸命「玩具っぽくなく」アレンジをし続けているわけだ。30年も(笑)。
その現在考えられる到達点のひとつが、お台場から東静岡に来た、あの1/1ガンダムなのだろう。

 でも・・・だから、「それ」は、僕らが知っている、あの「テレビで見た、ガンダム」とは、イメージがかなり違う。

1/1ガンダムは、カッコイイけどね。

だから、ジジイのガンダムファンには、最新のガンプラには、ちょっと違和感があることは否めないのだ。
幼なじみの恋人が、都会にいってあか抜けて違う人になっちゃった寂しさみたいな(笑)。
木綿のハンカチーフかよ。

30年前の、放課後の美術室・・・そんなことを、思い出しながら、ちょっと愛嬌のある、寸詰まりのパワードスーツを作っています。
ある意味、『俺ガンダム』なのかもね(笑)。

相変わらず、オセンチだね(笑)。

・ 五日目、六日目

軍用トラックのフェンダーを流用し、肩のアーマーを巨大化したので、下半身が貧弱に見えてしまうので、その対策として、足の長さは延ばさずに、付け根の位置を下にずらしました。さて・・・ついに、ガンプラを使っちゃった!
作りかけだった、ガンダムF91の「ダギイルス」を潰しちゃいました。
腰回りを改造して移植。
(て、これ、マイミクのSIGさんからいただいた『ジャンク箱』に入っていたんだっけ?)
ガンダム系のモビルスーツ(ロボット)って、フンドシとかスカートをはいてるんだけど、あれは発明だね。
どうしてもリアルに表現するのが難しい足の付け根を、上手く隠すことが出来る。
重量物を支える部分が、あんなに貧弱なわけがないと思うんだけど、そこを上手に誤摩化してる。
僕も利用させていただきました(笑)。
でも、付け根が一本の棒じゃあイヤなので、飛行機のタイヤとか装甲車のホイールとかの部品を貼って、ちょっとだけ力強く表現。スカートの隙間から見えちゃうからね(イヤン!)。

本当はガンプラは使いたくなかったんだよね。
個性(アク)が強すぎて、パーツの状態でも「ガンダムであること」を主張しちゃうから。
ミキシングビルドには、使えないんだよね、ガンプラは。
ガンプラをいくら改造しても、ガンプラにしかならないんだよね。
でも、このくらいなら、色を塗っちゃえばなんとかなるでしょ。

残ったダギイルスのパーツも、無駄にしないように、なにか作ろう。もったいないオバケが出ちゃうからね。
俺って、エコじゃないよなあ(笑)。
なんだかカッコよくなってきました。
実物を手に取るとカッコイイんだけど、写真じゃ、ちょっと解りつらいね。
色がバラバラだから。
もう少しディテールをいじったら、彩色しますね。

腕と足が元のキットのシルエットのまんまだったので、それを隠すために100円ショップの付け爪を付けました。
100円ショップには、使えるものがいっぱいある!
模型店と同じくらい楽しいよ、100円ショップ。
特に、台所道具関係とか、女性のオシャレ関係なんかに、模型に流用出来るものが多い。
だって、模型用のディテールアップ用のパーツばかり使っても、面白くないでしょ?そんなのだれかが用意してくれた、誰かと一緒のモノだから。
値段も高いしね。
あと、金属スプリングを付けて動力パイプを。まあ、深い意味は無い。演出。

腰の化粧まわしみたいな部分は、当初、クルマのラジエーターの部品を加工して付けていたのですが、もうちょっとスマートにしたいと思い、バイクの部品を。これは、そのまんま使用。
トンガリかたが、ちょっとゼータあたりの時代のデザインっぽいかな?

まあ、全体は、レトロフューチャーを狙っているんだけどね(笑)。
さて、何色で塗ろうか?

・ちょうど一週間目。

自衛隊色で塗りました。ミキシングビルドの作品を、いままで何個も創って来て、いつも思うことは、組み上がった時点でバラバラな印象なものも、とりあえず全体を同じ色で塗装してしまうと、それこそ「劇的」に、ひとつのものにまとまるっていうことだ。

 それこそ、最初からこういうキットがあったみたいにね(大笑)。

これはねえ、本当に快感なんです。一度味わえば解るからやってみて。
だからね、本当は、子供たちのミキシングビルドの教室でも、塗装はやりたいね。合宿とかで出来れば、素敵だね。模型合宿、模型キャンプ。
塗装って、僕も苦手だし、たしかに面倒くさいけど・・・だからこそ、その効果も絶大だもんね。


ちょうど手のうえに、チョコンと乗るサイズ。可愛いです。大きめのハムスターみたいな。ちょっとシリーズみたいにして、いくつか創っても楽しいかも。それこそ、ガンダム、ガンキャノン、ガンタンク三人組みたいなのを創っても良いね(笑)。まあ、今回も反省はあります。
まず、基本的な失敗は、「既製のロボットのキットを芯にして、ロボットを創ろうとした」ことだな。
そのために、元のキットのカタチから離れることに労力を使ってしまったから。これは違うよね。でも、中古模型屋で、格安キットを買って、こんなふうにお手軽に遊ぶってのはアリだよね。
・・・悩ましいところではありますな。

 まあ、白状すると、思ってたよりも、かなり楽しかったので、たぶん、また挑戦すると思います。
さて。
いかがでしたか?
一週間で創るオリジナルパワードスーツ。
とりあえず名前は「10(ヒトマル)式装甲機動歩兵」ということで。2010年に創ったからね。
愛称は、ただいま考え中です。それじゃ、また!                  たなかよしみ空想模型工房